海外エンタメジャーナル by Sam

海外ドラマが好き過ぎてエンタメ業界に入ったSamが、海ドラの感想やセレブニュースについて綴るブログです。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン1 感想(ネタバレ):一気見はムリなほど重い、真の「衝撃作」。

シーズン2目前ということもあり、今更ながら先日『ハンドメイズ・テイル』シーズン1を見終えました。

2017年のエミー賞で、配信サービスとして初めてHuluが作品賞を受賞した話題作。

その強烈な内容は耳にしてはいたのですが、実際に鑑賞してみて、顔面にパンチをくらったような衝撃を受けました。

単に「エグい」の一言で済ますと誤解が生じるかもしれませんが、そう感じずにはいられない、でもそれだけでは語れない重厚な物語なのです。

あまりに重くて、一気見は無理。1~2話観たら口直しが必要かもしれません(笑)。

以下、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン1全話を観た感想です。 

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン1:あらすじ

環境汚染により出生率の低下したアメリカは、キリスト教原理主義に支配されたギレアド共和国となった。

妊娠可能な女性は、「侍女」として「司令官」と呼ばれる男性の家に配属され、司令官とその妻のために子供を産む役割を担う。

全ての自由を奪われ、女性がモノとして扱われる恐ろしい世界が、侍女となった主人公ジューンの視点で描かれる。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン1:感想【ネタバレ】

「現代アメリカの未来」とも言われる、ギレアド共和国。

2007年に日本の厚生労働大臣が「女性は産む機械」発言で批判されていましたが、本作で描かれている侍女たちは、まさにそれ。

妊娠の大変さ、出産の痛み、子供への無償の愛、母となる女性が抱える全ての思いを完全に無視し、侍女たちはただ産むだけのマシンとして生きていくのです。

この世界の恐ろしさは、女性なら観ているだけで発狂したくなるレベル。

ディストピアということもあり、全く異なるジャンルですが『ウォーキング・デッド』がチラッと頭をよぎります。

ウォーキング・デッド』と比べ、「カナダへ亡命」という一か八かの逃げ道がある点では『ハンドメイズ・テイル』の方が希望はありますが、

愛する者と引き離され、娯楽は何一つなく、家族の支えもなく、ひたすら他人の子供を作るためだけに生きていくという点では、本作の方がずっと精神的にキツイ。

黙って従うしかない侍女たちから絶望感がヒシヒシと伝わり、観ているとお腹の辺りがどんよりしてきます…。

最初に「儀式」と呼ばれる性交のシーンを見た時は、「ん?何これ、どうなってんだ?」と目を疑いました。

侍女、司令官、妻、どの立場から見ても、気分の悪いものでしかない。こんな形で生まれてくる赤子は可哀想すぎる…!

 

また、妊娠した侍女は、出産後すぐに赤ちゃんを司令官の妻に渡され、実の母子でふれ合えるのは授乳の時だけ。

断乳後は赤ちゃんから離され、侍女は新たな司令官の元へ送られる・・・という、信じられないほどの残酷さ。

大変な妊娠生活と出産を乗り越えて、生まれてきた我が子に関われないなんて、辛いなんてものじゃないでしょう。

冒頭にも書いた通り、設定がいちいちエグい!

 

プロットだけ聞くと鬱になりかねない内容ですが、そんなことは気にならないぐらい作品のクオリティが高い。

「暗いから観るのやめよ…」とはならず、先の展開が気になるような演出が盛り込まれています。

ドラマや映画において「音楽」は重要な役割を担いますが、本作は絶妙な音楽チョイスにも注目が集まっています。

私が聞いてハッとしたのは、第2話のラスト。

このドラマで、まさか90年代の青春映画『ブレックファスト・クラブ』の "Don't You Forget About Me" が流れるとは!作品のカラーが全く違うのに!

そのエピソードは、音楽が流れ、最後に主人公ジューンが “Fuck.” と一言吐いて終わり。

その瞬間「コイツはやってくれるぞ」と予感させ、この先のジューンの行方を見届けたくなりました。

 

また、過去の回想も随所に挿入されていて、アメリカがギレアドへと変化していく過程やジューンと夫とのストーリーなど、この世界観への理解が深まっていきます。

過去があって今がある、この人の一言でこうなったのか…など、点と点がつながっていく楽しみがあります。

 

そして、一見抑圧された世界で従う者ばかりかと思いきや、同性愛や、司令官と侍女の秘密の関係、脱走なども描かれていて、所々でスパイスが効いています。

その先には恐ろしい罰が待っていますが、「脱走」の場合はうまくいけばカナダに亡命できるかも…!

ジューンの夫はカナダで生きていて、コーヒー片手に家族を待つ姿が…というかカナダがホント平和。

ジューンには早く家族と再会してほしいですねえ。ギレアドなんて崩壊してくれ…!

 

そして、本作を語る際に忘れちゃいけない、主人公ジューンを演じるエリザベス・モス。

エリザベス・モスは、本作でエミー賞&ゴールデングローブ賞主演女優賞を獲得しているわけですが、本当に称賛に値する圧巻の演技を見せてくれました。

そして、このジューンがまた強いキャラなんですよね。一見従ってるように見せて、時に反抗し、策略をめぐらせ、決してこの世界に屈しない。

彼女の強さが視聴者側にしっかり伝わるのは、エリザベス・モスの素晴らしい演技があってこそ。

エリザベスが過去に演じた『MADMEN』のペギーも、強くて向上心溢れる生意気なキャラでしたが、ジューンからも同様の強さとスマートさを感じます。

司令官フレッドから特別視され、運転手兼「目」のニックの気も引き、周囲の男性を惹きつけるという点でもペギーと共通しているかも。

ジューンがフレッドの妻セリーナに連れ出され、窓越しに娘の姿を見るシーンなんて、迫真の演技にこちらまで悔しくて悔しくて…!

その後「Bitch!」と言いながら怒り狂う姿は、凄まじいものがありました。(本当にとんでもないビッチですよ!)

 

これまでHuluのオリジナル作品はパッとしない印象だったので、こんな衝撃作を、最高のキャストと絶妙な演出で、完璧に映像化したことには驚きです。

今さら何言ってるんだって感じですが、本作を観るのが遅れたのは、Huluアカウントをお休みしてたからなのでお許しを…。

8/29から始まるシーズン2は、さらに凄まじい内容らしいので心して観ます!

 

Photo by Hulu via IMDb