『YOU -君がすべて-』シーズン1全話 感想:意外な展開だらけのストーカー物語に、最後まで目が離せない!
Photo courtesy of Lifetime
昨今の米テレビ界では、SNSのネガティブな面を描いたドラマが多い。
『アメリカを荒らすものたち』ではInstagramを使った犯罪やいじめ、『The Good Fight』ではTwitterのなりすましなど、今一度SNSとの関わり方について考えたくなる内容ばかりだ。
その中でも、"プライバシーの侵害" という形でその恐ろしさを描いたのが『YOU -君がすべて-』である。
一人の男が一目惚れをした女性をつけ回し、彼女の世界にどんどん入り込んでいく過程をストーカーの視点で描くのだが、
想像していたストーカー劇とは違い、フィナーレに至るまでに何度も意外な展開となり、あっという間に全10話を完走してしまった。
主人公のジョーを演じるのは、『ゴシップガール』ダン・ハンフリー役のペン・バッジリー。(好青年なストーカー役がハマりまくり。)
ヒロインのベック役は、『ワンス・アポン・ア・タイム』のエリザベス・レイル。(『リベンジ』のエミリー・ヴァンキャンプをもっと可愛くした感じで、人気でそう。)
そして、ベックの親友 ピーチ役として、『プリティ・リトル・ライアーズ』のシェイ・ミッチェルが久々にTVドラマに出演。(PLLエミリー役よりハマってるかも。)
それでは、以下『YOU -君がすべて-』シーズン1の感想です。(ネタバレ有)
『YOU -君がすべて-』シーズン1:あらすじ
本屋の店長 ジョーは、店に訪れた客のベックに一目惚れをする。
SNSで彼女の私生活を追い、住所を特定してつけ回し、ある出来事がきっかけで急接近する。
『YOU -君がすべて-』シーズン1:感想
ストーカーの話というとゾッとするよう心理スリラーを思い浮かべるが、本作は不気味さ一色というわけではない。
主人公のジョーは確かにサイコなストーカーだが、本を愛し、知的なユーモアがあり、アパートの隣に住む男の子に親切な好青年でもあるのだ。
そして、ライター志望のミレニアル女子ベックは、今時珍しいぐらいオンラインでも現実世界でも無防備。
SNSは全員公開で、スマホもパソコンもロックはなし。窓の外から家の中が丸見えでも、タオル一枚で過ごしている。
ジョーほど賢い人物でなくても、難なくストーキングできてしまうほどの無防備な生活を送っている。
おまけに自己愛が強く、若干ビッチな面もあり、イマイチ同情しづらいキャラとなっている。(とはいえ、被害者に非はないのだが。)
この他にも、ベックが想いを寄せていたベンジーや親友のピーチなど、脇役たちのゲスな人物像もはっきり描かれており、誰のサイドにもつけないまま興味深く物語は進んでいく。
その中で、何度も意外な展開を繰り広げ、結末をいたるまでの過程も実に楽しませてくれた。
まずは、最初に行く末が気になったのは、ベンジー。
あぁ居るよねって感じの若手起業家のゲス男で、ベックと関係があるため本屋の地下に監禁されてしまう。
ここは、ジョーは単なるストーカーなのか?人殺しなのか?彼のサイコ度合いが問われる場面。
ベンジーは自身のアレルギーや、ベックの知られざる本性を明かしたりと、(コミックリリーフ的な)キャラも立ってきて、
さらには過去にもみ消した犯罪の証拠を渡すことで、外に出してもらおうと図る。
もしかして助かる?とわずかな希望を持ち始めたりもしたが、結局はピーナッツオイル2杯(アレルギー)を盛られてマヌケな最期を迎えるベンジーなのであった…。
ベンジー Photo courtesy of Lifetime
次に、ずっとジョーのナレーションで描かれていた物語が、第4話で急にベックの視点になる。
キャプテンという名の怪しげな男の存在が浮上し、ベンジーの言っていたパトロンは本当にいたのか!となるものの、ふたを開けたら実は父親。(それも死んだと嘘をついていたことが発覚。)
ここでベックのバックグラウンドが描かれることとなる。
正直この時点でつけてきたジョーを怪しいと思っても良いぐらいだが、ベックは気にならないようだ。
性悪でリッチな親友のピーチは、大量の隠し撮り写真を保存しているほどベックに執着している。
ちなみに、またもやシェイ・ミッチェルが女の子を好きな役を演じているので PLLのエミリー&アリソンを思い出してしまうが、今回のシェイはエミリーでなくアリソン寄りの性悪。
ピーチが撮った写真や別荘での一件はなかなかの気持ち悪さだが、ジョーには敵わない。
サイコなジョーから盗まれ、殴られ、銃殺され、久々のテレビ出演だったのにシェイはS1でおさらばとなる。(残念!)
ピーチ Photo courtesy of Lifetime
1番驚いたのは、意外にも途中で2人があっさり別れてしまうこと。さらに、ジョーにカレンという新しい彼女までできるとは!
本作では、ジョー&ベックと、隣の子供パコという2つのプロットが進行するのだが、
カレンはどちらの問題にも貢献してくれたと思う。
彼女のおかげでジョーのベックへの異常な愛は少しずつ薄れ始め(たように見え)、パコの母親は解毒に成功。
しかし、今度はベックが軽いストーキングをしてジョーを追い始めたせいで、彼の異常性を引き戻してしまうのは、なんとも皮肉である。
パコ Photo courtesy of Lifetime
すっかり幸せなカップルと化したジョーとベックだが、実は別れる前にベックが裏切っていたことが発覚。
ケンカの原因となった「セラピストとの浮気疑惑」をジョーの被害妄想と思わせておいて、本当に浮気していたのだ。
ニッキー先生のプロットは「身元を偽って患者になったジョーの正体がバレる」展開になるかと思ったが、まさか結局先生がクロだったとは…。
こんな役を演じていたのが、ジョン・ステイモスなのがちょっと残念。
今回はベック殺しの罪を着せられてしまったが、もしかしたらS2で無実を主張して再登場するかも?
セラピストのニッキー Photo courtesy of Lifetime
そして最後、ジョーの元恋人で死んだはずのキャンディスが登場。どうやら生きていたらしい。
このラストは小説とは異なるらしいが、せっかくジョーから逃れたのに戻ってくるなんて、よほどの理由があるのでしょうね?
(ところで、キャンディスの顔どこで見たかと思ったら、レイ・ドノヴァンでレイにつきまとってた子だ。スッキリ!)
シーズン2はどう話が続くのかと思っていたが、ベックが死にキャンディスが出てきたことで、ジョーの過去を浮き彫りにする内容となりそう。
ジョーとベックは本という共通の趣味もあり、別の方法でアプローチすれば、きっと相性のいいカップルになっていただろうに…。
しかし、ジョーの不安感や執着心は異常なまでに強く、普通に女性を愛することはできないかもしれない。
その一方で、パコへの接し方や途中で身を引いたことを考えると、いずれサイコな部分をなくすことができるのでは?と望みを持っていい気もする…。
純粋に良い面も描かれていため、ジョーの人間性をつかみきれなかったが、
舞台をLAに移したシーズン2で、彼がどのような物語を繰り広げるのか、大いに期待したい。