海外エンタメジャーナル by Sam

海外ドラマが好き過ぎてエンタメ業界に入ったSamが、海ドラの感想やセレブニュースについて綴るブログです。

差別ツイートによる『ロザンヌ』打ち切りを受けて、『親愛なる白人様』に見る人種差別の描写を振り返る。

5月30日、朝Twitterを開いたらTLが『Roseanne(ロザンヌ)』打ち切りのニュースばかりで驚きました。

『ロザンヌ』とは1988年~1997年まで放送された、アメリカの労働者階級の家族を描いた国民的コメディで、
2018年3月に待望のリバイバルが実現し、今期の最高視聴率を記録しました。

リバイバル版は放送局のABCにとって大当たりとなり、すでに次のシーズンへ更新されていましたが、主演女優ロザンヌ・バーの人種差別ツイートが原因で、やむなく同局は番組打ち切りに踏み切りました。

『ロザンヌ』は日本未放送なので観たことないのですが、番組復活の話が出た頃から米メディアでは大変話題になっていたので、どんなものかと思っていました。

実際に放送がスタートすると、初回から高視聴率をキープ。打ち切りになるとはみじんも思っていなかったので、この事態にはビックリです。

そして、同じ頃に報道されたのが、差別防止研修のためスターバックス8000店舗一時閉店のニュース。黒人来店者の不当な逮捕が大きく批判され、従業員の「無意識の偏見」をなくすため実施されました。

 

ここ最近、アメリカの人種差別に関するニュースが日本でも目立ち、海ドラファンの視点で思ったのは、

こういった差別的な言動が止まないからこそ、『親愛なる白人様』のようなドラマが作られるのだということ。(つい、こんな発想になっちゃうんですよね。笑)

『親愛なる白人様』(原題 "Dear White People") 

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どんなドラマかというと、白人優位のアイビーリーグに通う黒人グループを中心に、アメリカに根強く残る人種差別問題を皮肉たっぷりに描いたNetflixのコメディです。(同名の映画が基になっており、こちらもNetflixで配信されています。)

主人公サマンサが大学でラジオ番組『親愛なる白人様』のホストを務め、差別主義者へ痛烈なメッセージを送るというなかなか挑戦的な設定で、
シーズン1の予告編がネットで公開されると「like」の数より多く「dislike」を獲得するなど、若干の問題作。

シーズン1では大学で開催された「黒人仮装パーティー」を軸に、シーズン2ではTwitter上でサマンサを攻撃するオルタナ右翼との戦いを中心にストーリーが進みます。

なかなか興味深いですよね?

本作のユニークな点は、黒人主体で白人を悪とするのではなく、逆に黒人が白人を差別してると思わせる部分も描き、アメリカにおける人種差別のあり方自体を風刺しています。

ゆえに、白人の警備員が黒人の生徒に銃を向ける描写もあれば、黒人に対して「なんでも人種のせいにする」といったセリフがあったりと、コメディタッチで両者の問題点に切り込んでいくあたりが斬新。

スタバが「無意識の偏見」という言葉を使った通り、本人が意図していなくても差別と認識される行為はあると思うし、上記のセリフにもあるように被差別側が過剰反応してしまうケースもあるのかも知れません。

黒人主役の大ヒットドラマにも異議あり

劇中で黒人グループの好きなドラマとして、シーズン1では『SCANDAL』、シーズン2では『Empire』をパロった変な番組(笑)が映されるのですが、
彼らはハリウッドにおける黒人の描き方にも不満をこぼしていて、『Empire』のことを「黒人ファミリーを主役にしたドラマは全員変人だ」なんて言っていたのが印象的。

S1で放送局FOXの最高視聴率を叩き出した、大ヒット番組ですよ?そんな風にとらえられてるの?(笑)

お互いを恐れ合う描写も

また、サマンサの男友達レジーの回で、レジーがATMに並んでいると、彼の姿を見た白人女性が引き出したキャッシュを慌てて持ち去るシーンがあります。

その一方で、サマンサは白人学生から批判を浴びる自分のラジオ番組について、「私が何を言っても、彼らが外を歩いて危険が及ぶことはない」といった発言をします。

ATMの白人女性は黒人男性のレジーにお金を奪われるのでは?と危険を感じ、サマンサは黒人であるだけで発砲されたり不当な扱いを受ける危険性について述べており、一部の黒人像/白人像が両者に「恐れ」を植え付けてしまったように感じました。

今も昔も差別は存在し続けている

シーズン2では、舞台となる架空のウィンチェスター大学における差別の歴史と、現在サマンサ達に起きている出来事をリンクさせています。

これは、歴史をさかのぼった昔においても、現在においても、人種差別が存在することを示しています。

昔と比べて大きな進歩を遂げたとはいえ、未だ完全に取り除けないというのは、いかに差別の根っこが深いかということ…。

日本人として思うのは

日本人として日本に住んでいると、人種差別を身近に感じることはありません。外野として意見を書くのもおこがましいほど…。

ただ、そのために差別に対する意識が低くなっている点は問題視すべきで、
ガキ使の黒塗り事件のような恥ずべき行為は、もう二度とあってはならないと思います。

私はアメリカに住んでいる時、「これアジア人に対する差別じゃない?」といった被害妄想を発動させていましたが(笑)、

決して自分が差別主義の考えを持たないのは、アメリカのドラマや映画で学ぶことができたからでしょう。映像の力は偉大です!

日本人としては、今回のようなニュースや差別を扱ったドラマを見て、他人事だと思わずに「考えること」や「意識を改めること」が重要だと思います。

そして、差別を根本から断ち切るには、何十億もの利益を捨てて人気番組を打ち切りにしてしまうほどの思い切った制裁が、今後も必要となってくるでしょう。

それでは、『ロザンヌ』関係者たちの救済と、『親愛なる白人様』S3への更新を願って…。